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アンティークジュエリーに纏わる情報とエピソード


by Infanta_ayan
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アンティーク・ジュエリー放浪記  その2

A氏というのは、アンティーク・ジュエリーが好きな人なら「あの方ね」とどなたもご存知の有名店のオーナー兼ディーラーで、その才能と日本人離れをした活躍のスケ-ルで異彩を放っています。

私は日頃、A氏は世間からその才能を誤解されている、と思うことがあります。こちらのお店とお付き合いのない方が遠くから見ていると、単に資金力があるから物を集めることができるというように思われているようですが、A氏を知る人からすれば、むしろそれは逆であることは明白なのですが・・・・・・

とにかく、エドワーディアンには満足できず、かといって、ルネッサンスのジュエリーは素晴らしいとはいってもお値段も一千万円クラス・・・とあって、身動き一つできないときに、そのお店の膨大なジュエリーの在庫の中から特に素晴らしい品を、買うという前提は一切無しに、個人の趣味という前提も無し、「とにかく素晴らしい作品を見なくてはいけない」とそれこそ浴びるように見せて頂いたのです。

丁度、イスメリアン・コレクションを扱われた時期で、相当数の名だたるカメオやインタリオを拝見し、マーチャントの偉大さに目覚め、当にミュージアム・クラスのルネッサンスのギメル・リングを手に取らせて頂いて感激し、英国のガーター勲章一式を良く解らないと思いながら眺め、エカテリーナ2世のハットピン(とはいっても、物凄く大きいのですが!)、サヴォイア家伝来のティアラ等々数々の名品を拝見させていただきました。
どういうわけかその時期には普通美術館でもここまでは揃わないというような物が特に多かったような気がします。

けれども、そうした逸品のジュエリーを見る事よりも重要だったのは、A氏のお話を伺うことでした。

A氏と他のディーラーの違いを一言でいうと、他のディーラーがアンティーク・ジュエリーを素晴らしい工芸品として「モノ」として捉え、そのテクニックや作品の素晴らしさを語るところを、A氏はアンティーク・ジュエリーを「美=その時代の精神性」として捉え、シャーマンのようにダイレクトにシンクロしてその美を語るのです。

そしてそれが決して単に感性や直感に溺れたものではなく、一流の研究者の知識の裏付けのもと、A氏ご自身の深い知性と教養によって、一つの思想にまで高められており、初めのうちはよく解らないながらもA氏の自説を聞いていると、何か一つ二つ引っ掛ることがあり、それがずっと後になってある日突然「あれは、こういうことだったのか!」と、私自身の実感を伴う深い理解が訪れるのです。


つづく
by infanta_ayan | 2005-05-05 04:06 | アンティーク・ジュエリー放浪記